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デジタル教科書か紙の教科書か
文部科学省がデジタル教科書を正式な教科書として採用するということから、デジタル教科書が子どもの脳発達に与える影響とは?~文部科学省の動き中学生以下へのデメリット~についてを見ていきました。
実際世界のなかでも、北欧スウェーデンではデジタル教科書の導入は2010年代初頭から試行され、実際に一部の小学校で使われ始めました。特に2012~2013年頃に、ICT教育の一環としてデジタル教科書が導入され、教育現場の効率化やインタラクティブな学習環境の構築が期待されました。
デジタル教科書を取り入れていましたが、現在すでに紙ベースの教科書へと戻す動きが出ています。
スウェーデンの教育当局や各小学校では、2019年頃から見直しの動きが強まりました。実際、多くの小学校がデジタル教科書の利用を補助教材に留め、主要な教材としては再び紙の教科書を採用する形に戻しています。

1. 子どもの健康と視力への懸念
- 長時間のスクリーン使用による眼精疲労
スウェーデンでは、特に低学年の子どもたちが長時間デジタル機器の画面を見続けることが、眼精疲労や視力低下の原因になるとの研究結果が示されています。ブルーライトの影響も懸念され、これが学習環境としてのデジタル教科書に対する見直しを促す一因となりました。 - 睡眠の質の低下
デジタル端末の使用は、特に夜間にブルーライトを浴びることで、睡眠ホルモンの分泌に影響を及ぼし、睡眠の質を低下させる可能性があるとされています。小さな子どもたちの発達にとって、十分な睡眠は極めて重要なため、健康面のリスクとして問題視されています。
2. 学習効果・記憶定着の低下
- 紙媒体の効果との比較
スウェーデンの教育現場では、紙の教科書で学習する場合、手で書き込むことやノートを取ることで理解や記憶の定着が促進されるという実証的な研究結果が出ています。これに対し、デジタル教科書は画面上での読書となるため、集中力が散漫になり、情報の整理や記憶が難しいとの指摘があります。 - 情報の整理能力の未熟さ
子どもたちがデジタル教科書で提供される多機能なコンテンツ(ハイパーリンク、動画、アニメーションなど)に触れると、必要な情報と不要な情報の選別がうまくできず、結果として学習効率が低下するという調査結果もあります。
3. 集中力の欠如と注意散漫の問題
- マルチタスクの誘惑
デジタル教科書は、インタラクティブな機能を持つため、他のアプリや通知が画面上に現れやすく、子どもたちの集中力を妨げる要因となります。これにより、学習中に余計な刺激を受け、結果的に授業内容に集中できなくなるケースが報告されています。 - 自己管理能力の問題
特に低学年の子どもは自己管理能力が十分に発達しておらず、デジタル端末を使う環境下では誘惑に負けやすいという点も、スウェーデンでの見直しの一因となっています。
4. 社会性と対面コミュニケーションの重要性
- 対面でのやり取りの減少
紙の教科書を使った授業では、子どもたちは教師や同級生と直接コミュニケーションを取りながら学習するため、社会性や協調性が育まれます。一方、デジタル教科書中心の授業では、画面上での情報交換に偏りが生じ、対面コミュニケーションの機会が減少し、子どもたちの情緒や社会性の発達に悪影響を及ぼす懸念があります。
5. 実践データと現場のフィードバック
- 現場からの反応
スウェーデンの教育現場では、実際にデジタル教科書を導入した結果、子どもたちの読解力や記憶定着が紙教材を使用している場合に比べて低下しているとの報告が出ています。また、教師や保護者からは、子どもたちが画面に依存しすぎているという声が多く、これが政策見直しの重要な理由となっています。 - 健康面と学習効果のバランス
結果として、スウェーデンでは健康面(視力や睡眠の質)と学習効果(読解力、記憶定着、集中力)を総合的に評価し、紙の教科書の方が子どもたちに適しているという結論に至っています。
日本はデジタル教科書に対してどのように考えているのか
文部科学省では「令和5年度『学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業』事例動画」をまとめてアップしています。
この内容は、デジタル教科書がもたらす学習効果の向上とともに、健康面や発達面、コミュニケーションの問題といった課題について実証的なデータと事例をもとに議論されています。主なポイントは以下の通りです:
- 研究目的と背景
デジタル教科書の効果・影響を定量的に把握し、教育現場での最適な教材選定の参考にすること。 - 学習効果の向上とその成功事例
インタラクティブなコンテンツを活用した授業で、子どもたちの理解度が向上したケースがある一方で、集中力の低下が懸念される事例も。 - 健康や発達へのリスク
長時間のスクリーン使用による眼精疲労、ブルーライトの影響、情報過多による集中力の低下が特に低学年に影響を及ぼす可能性が指摘されている。 - 教師・保護者の視点と現場の課題
対面でのコミュニケーションや、紙媒体の持つ書き込み効果が失われることへの不安が存在する。 - 技術的課題と今後の展望
ICT環境の整備やデジタルリテラシーの向上、ハイブリッド教材の導入など、将来的な改善策が提案されている。
今後の教育現場
これらの内容から、今後の教育現場では、デジタル教科書のメリットとデメリットを総合的に検討し、子どもたちの健全な発達と学習効果を最大化するための教材選定がますます重要になってくると考えられます。
まとめ
さいごに、北欧スウェーデンがデジタル教科書の見直しを進めた主な理由は以下の通りです。
- 子どもの健康と視力保護
長時間のスクリーン注視が眼精疲労や視力低下、睡眠障害を引き起こすリスクがあるため、幼児や低学年には紙媒体が望ましい。 - 学習効果の向上
紙の教科書では手書きのメモやノート取りが可能で、情報整理と記憶定着に優れているとの研究結果があり、学習効果が高まる。 - 集中力と自己管理の強化
デジタル教科書の多機能性や通知による誘惑が、子どもたちの集中力を低下させるため、特に自己管理能力が未発達な子どもにとっては不利な環境となる。 - 対面コミュニケーションの促進
紙の教材を使った授業は、直接的なコミュニケーションやグループディスカッションが活発になり、社会性や情緒の発達を支える。 - 実践データに基づく現場のフィードバック
実際の教育現場での調査結果から、デジタル教科書使用時の学習効果や健康面への悪影響が指摘され、これを改善するために紙媒体への回帰が決定された。
これらの理由から、北欧スウェーデンはデジタル教科書の導入を見直し、子どもたちの健全な発達を支えるために紙の教科書を再導入する方向へと舵を切ったのです。
今後、日本の教育現場では、このままデジタル教科書を取り入れる動きをしていくのか。子どもたちの健康と学習効果を両立させるための最適な教材選定はとても大切なことですので、今後も注目していきたいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。