子どもの脳がスマホにどれだけ絞り取られているか、私たち自身もスマホ使用後に脱力感、疲労感を感じることがありますよね。私自身今回の記事を書くにあたり、知れば知るほど危機感が増しました。
SNSが子どもの心を変えている?健全なメンタルを守るためのSNS影響と対策でも触れましたが、スマホを子どもが所持することは私たちが考えている以上に子どもたちに影響を及ぼしている大きな問題の1つだと私個人考えています。
今スマホを所持している子どもたちは、大人が思っているよりも長時間スマホを使用しています。
その長時間利用による デジタル依存 や心身への影響が社会問題化しつつあります。
本記事では、日本国内および海外の最新データをもとに、子どものスマホ利用率や利用時間、スマホが子どもに与える悪影響(睡眠不足・集中力低下・メンタルヘルスへの影響など)、そしてスマホ依存に関する専門家の意見や研究データを紹介します。

子どものスマホ利用率と利用時間(日本と海外)
まずは子どものスマホの普及状況について、最新の統計データを確認しましょう。日本では小学生から高校生までスマホの所持率が年々増加しており、海外でも同様の傾向が見られます。

日本: ICT市場調査会社の調査(2024年)によると、5~17歳の子どもの約47.9%がスマートフォンを所有していましたm2ri.jp。特に小学校から中学校へ上がる12歳時点での所持率は60.9%と過半数を超えています。また、子どものスマホ利用時間は平均2時間ほどだが、年齢が上がるほど増加し5時間以上の利用は、10歳以上の小学生が24・7%、中学生は44・8%、高校生は56・8%だった。高校生の3人に1人が7時間以上利用していた。だった。高校生の3人に1人が7時間以上利用していた。

5時間以上の利用は成人(18~69歳)の平均利用時間とほぼ同程度か、わずかに上回る水準です。

- アメリカ: ピュー研究所の調査では、米国のティーンエイジャー(13~17歳)の95%がスマートフォンを所持またはアクセス可能だと報告されていますpewresearch.org。スクリーン(スマホやPCなど)への接触時間も非常に長く、2021~2023年の統計によれば12~17歳の約半数(50.4%)が1日4時間以上スクリーンを使用しているといいますcdc.gov。別の調査では、米国のティーンのスクリーン時間は平均して約8時間40分/日にも達するとの報告もありmykidsvision.org、日常生活の中で膨大な時間をデジタルデバイスに費やしていることがわかります。
- イギリス: イギリスでもスマホは急速に普及しており、通信規制当局Ofcomの調査によると12歳までに97%もの子どもが自分の携帯電話(スマホ含む)を所持していることが報告されていますgov.uk。このように欧米諸国では中学生年代でほぼ全員がスマホを持つ状況になっています。
日本・海外ともに、子どもたちの間でスマホが日常的なツールとなり、使用時間も長時間化しているのが現状です。では、こうしたスマホの多用が子どもにどのような影響を及ぼしているのでしょうか。
スマホ利用が子どもに及ぼす悪影響
スマートフォンの長時間利用は、子どもの発育や健康にさまざまな悪影響を及ぼすことが指摘されています。具体的なデータに基づく主な悪影響は次のとおりです。
睡眠不足:
就寝時にスマホを手元に置いている子どもは、置いていない子どもに比べて平均で21分も睡眠時間が短いことが研究で明らかになっていますcnn.co.jp。米国で約2,000人の小中学生を対象にした調査(2012~2013年)では、寝室にスマホなどの小型画面機器を持ち込む子どもは持ち込まない子より平日の平均睡眠時間が短く、睡眠不足を自覚する傾向が強いと報告されていますcnn.co.jp。睡眠時間が慢性的に不足すると、子どもの成長ホルモン分泌や脳の発達に悪影響が及ぶだけでなく、日中の注意力低下や情緒の不安定にもつながります。実際、東北大学の研究では睡眠時間が短い子どもほど記憶を司る海馬の体積が小さいことが確認されておりpresident.jp、慢性的な睡眠不足が学習・記憶能力の面でも悪影響を及ぼす可能性が示唆されています。
集中力の低下:
スマホの過剰使用は子どもの集中力や学業成績にも影響します。東京都が実施したある調査(2017年)では、子どもにスマホを持たせたことで「勉強に集中できなくなった・記憶力が下がった」と感じた保護者が15.3%いたことが報告されていますkids.gakken.co.jp。
東北大学加齢医学研究所が全国約7万人の小中学生を分析した研究でも、1日3時間以上スマホを使用する子どもは、どれだけ勉強や睡眠を確保していても学力が平均未満に落ち込む傾向が見られましたpresident.jp。
スマホに長時間没頭することで勉強時間や睡眠時間が削られることに加え、マルチタスク的な情報処理習慣が身について注意力が散漫になる可能性も指摘されています。結果として、学習面で本来の能力を発揮できなくなる恐れがあります。
メンタルヘルスへの影響:
スマホやインターネットの長時間利用は、子どもの精神面にもリスクを及ぼします。米国疾病対策センター(CDC)の報告によれば、1日4時間以上のスクリーン時間があるティーンは、不安症状(27.1%)や抑うつ症状(25.9%)を抱える割合が4時間未満の層よりも高いことが示されていますcdc.gov。過度なスクリーン依存は孤独感や不安感の増大と関連するとの研究もあり、自己肯定感の低下やうつ傾向の要因になり得ます。また、前述の睡眠不足や集中力低下とも相まってストレス耐性の低下や情緒不安定(イライラしやすくなる等)を招くケースも報告されていますsukusuku.tokyo-np.co.jp。子どものメン
この他にも、スマホの長時間使用は視力の低下(ブルーライトや至近距離での画面凝視による目への負担)や姿勢の悪化(長時間の前屈み姿勢による猫背や首・肩こり)などの身体的影響も懸念されています。実際、前出の東京都の調査では「視力が落ちた」(18.7%)や「姿勢が悪くなった」(12.3%)と感じる保護者も多くいましたkids.gakken.co.jp。総じて、子どもの健全な発育のためにはスマホの使い方に注意が必要だと言えるでしょう。
スマホ依存・デジタル依存に関する専門家の見解
子どもの長時間にわたるスマホ利用は、「スマホ依存」「デジタル依存」と呼ばれる問題を引き起こす場合があります。依存症レベルにまで至ると、子どもの生活や健康に深刻な支障をきたす恐れがあるため、専門家も強い警鐘を鳴らしています。
デジタル依存の広がりと実態
日本におけるネット・スマホ依存の実態について、厚生労働省は近年の調査結果から衝撃的な数字を公表しています。それによれば、インターネット依存が疑われる中高生は約93万人、さらにその予備軍(不適切な使用傾向にある層)は約160万人に上る可能性があるとされています。2012年時点ではネット依存傾向の中高生は推計52万人ほどでしたが、スマホ普及の加速に伴いわずか数年で約1.8倍にも増加した計算ですjschild.med-all.net。もはやネット・スマホ依存は珍しい特殊なケースではなく、多くの子どもが陥り得る身近な問題となっていることが伺えます。
実際、民間調査でも保護者の危機感は高まっています。MM総研の2024年の調査では、子どもにスマホを持たせている親の48.2%が「スマホ依存」を懸念していると回答しており、これは数ある不安要素の中で最も高い割合でした。さらに「実際に経験したトラブル」としても、「スマホ依存」は14.0%でトップとなっており
m2ri.jp、約7人に1人の子どもが実際にスマホ依存的な問題を抱えた経験があることになります。このように、かなりの子ども達が既にデジタル依存のリスクに晒され、保護者もそれを強く懸念している状況です。
スマホ依存が脳と生活にもたらす影響

では、スマホやゲームに依存することで子どもの心身に何が起こるのでしょうか。専門家の見解を探ってみます。
医師でスマホ依存防止研究会代表の磯村毅氏は、スマホ・ゲームに夢中になる子どもの脳内で二つの大きな変化が起きると説明しています。
一つはドーパミンの過剰分泌です。ゲームやSNSで遊んでいるとき、また通知に反応して「次は何だろう?」とワクワクしているとき、脳内で報酬系物質であるドーパミンが大量に放出されます。この強い快感が繰り返されることで脳はその刺激に慣れ、更なる刺激を求めるようになります(いわゆる 耐性 の形成)。
その結果、以前と同じような軽い刺激では満足できず、より長時間・高頻度でスマホをいじったりゲームをしたりしないと物足りなく感じるようになるのです。
もう一つの変化は前頭前野(脳の自己制御や感情制御を司る部分)の機能低下です。スマホやゲームに熱中している間は前頭前野への血流が十分に行かず、この領域の働きが抑制されます。
前頭前野は「やりすぎはよくない」「今は我慢しよう」といったブレーキをかける役割を担っていますが、その働きが弱まることで子どもは感情をコントロールしづらくなり、イライラしやすく衝動的になりがちだとされています。
磯村医師によれば、依存症が進行した子どもには不登校や家庭内での暴力、昼夜逆転生活などの問題が生じるケースも多いとのことですsukusuku.tokyo-np.co.jp。

「やめなければいけないと頭では分かっていても、自分の意思では止められない」状態に陥ってしまうのが依存症の怖さですね…
専門家からのアドバイスと今後の対応
スマホ依存の兆候としては、「約束した使用時間を守れなくなる」「スマホを取り上げられると極端に機嫌が悪くなる」「日常生活(食事・睡眠・勉強など)よりスマホを優先する」などが挙げられます。そうしたサインが見られた場合、専門家は早めの対処を推奨しています
家庭でのルール設定やフィルタリングの活用、場合によっては専門機関への相談も検討すべきでしょう。
子どものスマホ依存やデジタル依存の問題に対して、社会全体でも対応が進み始めています。世界保健機関(WHO)は2019年にゲーム依存症を「Gaming Disorder(ゲーム障害)」として国際疾病分類に正式登録し、デジタル依存への警戒を強めましたjschild.med-all.net。
国内でも文部科学省や地方自治体が学校でのスマホ持ち込み禁止や使用制限のガイドラインを打ち出すなど、環境づくりの取り組みが見られます。例えばイギリスでは2024年に政府が学校での携帯電話禁止措置を打ち出し、ユネスコ(UNESCO)も学業成績や子どもの幸福に悪影響を与えるとして学校でのスマホ禁止を各国に提言していますgov.uk。
おわりに
子どもたちのスマホ利用状況とデジタル依存について、最新データや専門家の見解を交えて紹介しました。日本を含む世界中で子どもがスマホに触れる年齢は低年齢化し、その利用時間も増加の一途をたどっています。それに伴い、睡眠不足や集中力の低下、メンタルヘルスへの影響といった懸念がデータとして明らかになりつつあり、スマホ依存の問題も無視できない規模で広がっています。
もちろん、スマートフォンやデジタル技術は子どもたちの学びや創造性を広げる有益なツールにもなり得ます。重要なのは、子どもの発達段階に応じた適切なルールと見守りのもとで、スマホと健全に付き合っていくことです。家庭や学校、社会が協力して子どもたちのデジタルとの付き合い方を導き、メリットを活かしつつデメリットを最小限に抑える工夫が求められています。本記事の内容がその一助となれば幸いです。